『真鶴』 川上弘美

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  失踪した夫の日記には、ただ一言「真鶴」と記されていた。

  不在の夫を思いつつ、恋人と付き合う京。 「存在とは何か」を問う傑作長篇。 



ミステリーっぽい作品なのかなって思って読み始めたのですが ちょっと違っていました。

やっぱりこの作者さん独特のフワフワ感があり、

なんだかつかみどころがなくて謎もスッキリとはしない感じです。







「失踪」って 残された者にとっては一番苦しいことなのかもしれない。

何か理由があって別れたり死亡したりすることよりも もっと。







失踪した夫に対する気持ち、恋人に対する気持ち、子供に対する気持ち

全部がとりとめなく描かれているような感じなのですが

そのフワフワした空気が より一層 生(なま)の人間を感じさせるような気がしました。

人の心の中って 整理整頓されているものではない。ですよね。







ひらがなが多い文章で、それに慣れるまではちょっと読みにくかったような。

私はこういうブログの記事とかメールとかを入力していると

どの言葉を漢字にしてどの言葉をカタカナにしてどの言葉をひらがなにするかって

結構気になっちゃったりするのですが、

この作品を読んでいて 漢字と平仮名のバランスって大事かもって改めて思ったのでした。

ちょっと変えるだけで だいぶ印象が違うような気がします。



たとえば
 青慈のくちびるのやわらかさを、思いだす。あつい花びらのような、ふれごこちだった。
とか。

この平仮名遣いが 作品のフワフワ感に繋がっているんだろうなぁ。