『チャイ・コイ』 岩井志麻子
ひとり旅で訪れたベトナムで、私は恋に落ちた。 この男と寝たい、という狂おしい思いを恋と呼ぶならば。 サイゴン川のほとりで、ホテルの部屋で、互いを求め合う淋しい男女の物語。 選考委員の圧倒的な支持を得て、第二回婦人公論文芸賞を受賞した話題の意欲作。
何年か前 バラエティ番組でみた岩井さんの印象が強烈だったので(笑)
小説家だと知って、作品を読んでみたいと思っていたのですが。
いつの間にか何年も経ってしまっていました。
古本屋さんをぶらぶらしていたときに偶然みつけて思い出し
表紙の色がすごく綺麗だったので何となくこの作品を選んだのですが、
恋愛小説だと思っていたら全然印象が違ってビックリ。
大部分がセックスシーンで構成された物語でした。
私はたぶん、ちゃんとした(?)官能小説って読んだことがないのですが、
この作品は 普通の官能小説っていうものとは全然違うような気がしました。
(って言っても、読んだことがないのでどういうのが 「ちゃんとして」 いるのか、
どういう作品が 「普通」 なのか、全然わからないのだけれど…(^^;))
セックスそのものよりも、精神的・感情的な部分が多く描かれている感じがして。
書き手が女性だからなのか、性欲の奥にみえる孤独感とか焦りにはすごく共感できました。
でも、一目惚れした人を「愛人」と呼んで 想像の中でその人の肌の味を味わったりするっていうのは
すごい想像力…(^^;)
しかも最終的に “この人と寝たい” という思いを実現させてしまうなんて…!
私も真似できるようにがんばろうと思います(笑)
妄想力はあるほうだと思っていたのですが、本書を読んでその自信は砕け散ったのでした…(^^;)
渡辺淳一さんが解説で 男性作家・女性作家の性差について触れていて
男性作家は 女性の性の奥深い実感を
女性作家は 男性の狂おしいほどのセックスへの渇望と射精後の虚脱感を
いかに想像力が豊かで感性が鋭くても表現することは難しい、と書いています。
私は男性の作家さんが描く女性主人公に違和感を感じることが多いのですが、
この作品とこの解説を読んで それを再認識したというか、
違和感の正体がはっきりわかった気がしました。
そのうち 男性がかいた男性主人公の官能小説にチャレンジしてみたいと思います…(^^;)